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2019.03.15

相続法改正ポイント①~配偶者居住権

配偶者居住権の新設

 ① 被相続人の配偶者が
 ② 被相続人の財産に属する建物に
 ③ 相続開始時に居住していた場合において
 ④ 遺産分割によって配偶者居住権を取得、もしくは配偶者居住権を遺贈されたとき

以上の条件を満たす被相続人の配偶者は、その建物の全部について無償で使用収益をする権利を取得することができます(配偶者居住権;新民法1028条)。
また、これらの要件を充たす場合に、相続人間で遺産分割協議が行われる場合は、分割による建物の帰属が確定した日または相続開始から6ヶ月が経過するまでのいずれか遅い方の日までの間、無償でその建物に居住することができます(配偶者短期居住権;新民法1037条)。

これらの制度は、2020年4月1日からスタートします。

配偶者居住権の趣旨

これは被相続人の死亡により残された配偶者の保護を図るための制度です。

これまでであれば、残された配偶者が従来居住していた家屋(居住建物)に更に住み続けるためには、その居住建物を相続によって取得するか、
他の相続人が相続した場合には好意で住まわせてもらう(場合によっては借りる)、という解決しかありませんでした。

前者は、居住建物の価格によっては、その他の相続財産の相続を諦めなければならないことがありました。
後者は、居住建物所有者との関係悪化や、居住建物が売却・賃貸処分された場合にはその権利を対抗できませんでした。

このような残された配偶者の不安定な立場を改善するため、
残された配偶者が一定の条件のもと、当然に、
従来どおり従来の居住建物に住み続けることを認める権利が配偶者居住権です。

配偶者居住権がある場合の遺産分割

配偶者が遺産分割によって配偶者居住権を取得した場合、配偶者居住権は相続財産として扱われます。
配偶者居住権は相続財産として金銭的に評価され、
配偶者は、自己の具体的相続分から配偶者居住権の財産評価額を控除した残額を相続することになります。
この価額は耐用年数や民法の法定利率などによって左右されます(平成31年度税制改正によって算定式が示されています。)。
この評価により、配偶者は、居住建物の所有権を相続する場合に比べてより多額の相続財産を取得することができるようになります。

配偶者居住権の内容

配偶者は、遺産分割または相続人からの遺言による遺贈によって、配偶者居住権を取得します(新民法1028条1項。以下単に「新」のみで表記します。)。
共同相続人間で配偶者が配偶者居住権を取得することが合意されているとき、
配偶者が配偶者居住権の取得を希望する場合で特に必要があると認められたときは、
家庭裁判所の審判によって配偶者居住権を取得することも可能です(新1029条)。

配偶者居住権は原則として配偶者の終身の権利とされていますが、
遺産分割協議や遺言、審判の中で別段の定めをすることもできます(新1030条)。

居住建物の所有者は配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負います(新1031条)。
配偶者は、登記をしなければ配偶者居住権を第三者に対抗することができません。

一方、配偶者居住権は、居住建物を残された配偶者の所有物にする権利ではなく、
あくまで居住建物の使用収益を認めるものに過ぎないので、一定の制約が設けられています。
具体的には、居住建物の使用収益にあたっては、従前の用法に従い、所有者に対する善管注意義務を負担しますし、
居住権を譲渡したり、居住建物所有者の断りなく勝手に又貸しや増改築をすることはできません(新1032条1項~3項)。
これらの決まりごとに違反があった場合、居住建物の所有者は是正の勧告ができ、
期間内に是正がされなければ配偶者居住権を消滅させることができます(同4項)。

配偶者は居住建物の使用収益に必要な修繕をすることができます。
配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物所有者が修繕することができます(新1033条1項2項)。
居住建物の使用収益にあたって発生する通常の必要費用も配偶者の負担となります(新1034条)。

配偶者居住権の消滅


配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物を返還しなければなりません。
ただし、配偶者が家屋の共有持分を有する場合は、その持分による使用収益が可能ですので、
家屋所有者は、配偶者居住権の消滅を理由として家屋の返還を求めることはできません(新1035条1項)。
また、配偶者居住権は、定められた期間の経過(新597条1項)、配偶者の死亡(同3項)、
居住建物が使用収益できなくなった場合(新616条の2)には、消滅します(新1036条)。

配偶者短期居住権

配偶者が、配偶者居住権の要件に加えて、その居住建物に相続開始時点で無償で居住していた場合、
一定期間、従来の居住建物にそのまま無償で居住する権利を法律によって認めたものです。

遺言ではっきり配偶者居住権を設定する、と定められていなかった場合、
遺産分割協議や家庭裁判所の審判が定まるまでの配偶者の立場は不安定なものになります。
この権利が法定されることによって、一定の期間、
配偶者はそのまま従前の居住建物に無償で住み続けることができることになります。

「一定の期間」は、具体的には、以下のとおりです(新1037条)。
① 居住建物が相続財産の一部として、共同相続人間で遺産分割の対象となる場合
 → 遺産分割によって居住建物の帰属が確定した日、または相続開始から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日。

② 居住建物が第三者に遺贈された場合など、①以外の場合
 → その居住建物の取得者が配偶者短期居住権の消滅の申し入れをしてから6ヶ月が経過した日。
   つまり、居住建物を取得した人が出ていくよう請求しても、明渡しまで6ヶ月間の猶予が与えられているということです。

③ 配偶者が配偶者居住権を取得した場合
 → この場合、より強力な権利を取得したことになるので、短期居住権は消滅します(新1039条)。


なお、配偶者短期居住権によってもやはり居住建物が自己所有物になるわけではないので、
従前の用法に従った善管注意義務を負いますし、第三者に無断で使用させることも禁じられています(新1038条1項2項)。
義務違反の場合、居住建物の取得者は配偶者短期居住権を消滅させることができます(同3項)。

また、配偶者短期居住権も、配偶者の死亡(新597条3項)、
居住建物が使用収益できなくなった場合(新616条の2)には、消滅します(新1041条)。
配偶者短期居住権が消滅し、配偶者が居住建物に何らの権利も有さなくなってしまった場合は、
居住建物の返還をしなければなりません(新1040条1項)。

家屋返還時の原則

配偶者居住権も、配偶者短期居住権も、
配偶者が相続開始後に家屋に付属させた物がある場合は、
原則として返還時にその物を除去する必要があり、
また除去する権利を有します(新1035条2項、新1040条2項、新599条1項2項)。
また、配偶者は、相続開始後に家屋に生じた損傷がある場合、
その損傷を原状に復する義務を負います(新1035条2項、新1040条2項、新621条)。

要するに、家屋を所有者に返還する場合には、相続開始時点の状態に戻すことが原則となります。