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2019.10.03

婚姻費用分担について

婚姻費用とは

婚姻期間中は、その資産・収入・社会的地位などに応じた家庭生活を維持するために必要な費用を夫婦がお互いに分担する必要があります。これは同居している場合はもちろんですが、別居していても戸籍上婚姻関係が維持されていれば同じです。
生活の維持に必要な費用の分担が適正に行われない場合、婚姻費用の分担を求めることができます。
特に、家庭内不和によってこれまで家計を支えてきた夫が家を出ていってしまった場合などに顕在化しがちな問題です。

婚姻費用の定め方

婚姻費用の具体的な額(月々いくらにするか)や支払の方法は、夫婦のそれぞれの事情(お互いの収入、今後の見通し、子どもの有無、教育費など)を考慮する必要がありますので、まずは夫婦が話し合いで決めることになります。

当事者同士の話し合いが上手くいかなければ、支払義務者(婚姻費用を払わなければならない方)の住所地を管轄する家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立て、調停手続を利用しての話し合いをおこなうことになります。
ここでも折り合いがつかなければ審判に移行し、裁判官が婚姻費用を決定します。

婚姻費用の基準

話し合いで決めると言われても、いくらが適正なのか判断できないかもしれません。
そこでよく用いられるのが、東京と大阪の裁判官で構成されている「東京・大阪養育費等研究会」が作成した「婚姻費用算定表」です。

夫婦の内、収入の多い方(支払義務者)と、収入の少ない方(権利者)の実際の収入額、及び同居する子供の年齢及び人数を基準として、標準的な婚姻費用を簡単に算出することができるものです。
ネットで「婚姻費用 算定表」と検索すれば出てくると思います。
(なお似たようなものに「養育費算定表」もありますので、間違えないようにしてください。)

注意しなければならないのは、この算定表は絶対的なものではなく、最終的な分担額は各事案の個別的事情を考慮して定めなければならないとされていることです。
子どもが病気の通院で治療費が多くかかるとか、私立学校に通っているとか、夫婦間・家庭に特殊な事情があれば考慮して決めるべきなのです。

また、年収が2000万円を超えている場合や、子どもが4人以上いる場合など、算定表に載らないような場合は、計算式を用いて個別に計算することになります。

婚姻費用算定表の見方

算定表では、収入が「給与所得」と「事業所得」とに分かれています。

無職・無収入であれば「0」としますが、働けるのに働いていないような場合は、賃金センサスや過去の収入を用いるなどして、収入を推計して算出します。

給与所得と事業所得の両方がある場合は、算定表の給与所得者の収入額に対応する事業所得の金額を、事業所得と合算するか、逆に算定表の事業所得者の収入額に対応する給与所得を給与所得に合算することで計算します。

この他の収入、例えば児童手当や実家からの援助金は、加算しません。

住宅ローンについて

支払義務者が婚姻費用に加えて、権利者が居住する住居の住宅ローンも負担している場合があります。
例えば、夫が自分名義のローンを組んで購入したマンションに、夫がローンを負担し続けたまま妻や子どもが住み続けるケースです。ローンは月々8万円、婚姻費用は月10万円と仮定します。

この場合、原則として、ローンの支払金額を婚姻費用からそのまま差し引くことはできません。つまり、夫がローンを8万円払っているから、差額の2万円だけ婚姻費用として払う、ということは認められません。
夫のローン支払いは夫名義のマンションのための支払いであり、家族の生活保持とは別に考える必要があるためです。

もっとも、ローンの支払によって妻は住居費の負担を免れていることになりますし、夫の負担が大きくなりすぎることにも配慮しなければなりませんから、一定の調整が必要になります。
そこで実務的には、ローンは全額控除するのではなく、一部を婚姻費用から除いて調整することになります。

一部の控除の計算方法ですが、
①義務者の月収に応じた標準的住居費を、住宅ローン支払額から控除し、その額を特別な経費として婚姻費用から差し引く方法
②婚姻費用の金額から、権利者が負担を免れている権利者の月収に応じた標準的住居費を差し引く方法
などが用いられています。

このように書いてもピンとこないと思われますし、これもあくまで考え方の一つに過ぎませんので、詳細は弁護士にご相談ください。