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2019.03.20

相続法改正ポイント③~遺産分割制度

遺産分割制度の改正

平成28年12月19日の最高裁判決により、これまでは共同相続人間で相続開始と同時に当然に分割されていた(したがって、自分の法定相続分については払い戻しを受けることができた)預貯金債権が遺産分割の対象に含まれるとされ、遺言がある場合を除き、遺産分割協議を経なければ銀行等の預貯金債権を引き出すことはできなくなりました。

遺産分割協議が成立するまでの預貯金を引き出せない不都合を解決するため、一定額の預貯金の払い戻し制度(新民法909条の2)、及び家庭裁判所の保全処分による引き出しの要件緩和(新家事事件手続法200条3項)が認められました。


また、相続人の特別受益の算定にあたって、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方がもう一方に対して居住用建物・敷地を遺贈・贈与した場合、持戻免除の意思表示があったものと推定されることになり(新民法903条4項)、配偶者の生活の保護を図っています。

この制度は、2019年7月1日からスタートします。

遺産分割前の預貯金の確保①~預貯金債権の行使

各共同相続人は、相続財産に属する預貯金債権について、一定の金額について引き出しをすることができるようになります。
各共同相続人が遺産分割の成立前に引き出すことができる金額は、相続開始時の預貯金債権額の3分の1に、預貯金の引き出しを請求する相続人の法定相続分を乗じた金額とされています(新909条の2)。
また金融機関ごとに150万円とする上限が定められています。

遺産分割前に引き出された預貯金については、その引き出した相続人が遺産の一部分割によって取得したものとみなされます。

なお、預貯金債権が遺贈や特定財産承継遺言(「相続させる」遺言)の対象となっている場合は、その預貯金債権は遺産に属しないこととなるので、払戻しの対象となることはありません。

遺産分割前の預貯金の確保②~家裁の保全処分

遺産分割の調停・審判の申し立ては家庭裁判所に対して行います。
この場合に、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により「遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるとき」は、その特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができるようになります(家事事件手続法200条3項)。

遺産分割の調停が長引いているために被相続人の借金が返せないとか、相続人が生活に窮するようになった場合には、この申立をすることで、預貯金の一部の払い戻しができるようになります。
ただし、他の共同相続人の利益を害しないことが要件になっていますので、例えばいくら生活に困窮していても、遺産たる預貯金の全額の払い戻しはできないと考えるべきでしょう。

持戻免除に関する改正

共同相続人の中に生前被相続人から生計の資本等の贈与を受けていた場合、遺産分割協議では、この贈与分を考慮した上で解決が図られることになります。
これを「特別受益」といいます。
具体的には、前渡しされた相続財産を相続開始時点の相続財産に加算した上で、算定した相続分から、その特別受益分を控除して具体的相続分を計算することになります。

これまで、この前渡しを相続財産に加算させないためには、被相続人の「持戻免除」の意思表示(通常遺言でされます。)が必要でした。
逆に言うと、遺言がない場合は遺産分割にあたって生前贈与や遺贈が勘案されてしまい、配偶者である相続人が不利な扱いを受ける可能性がありました。

例えば、残される配偶者の老後に配慮して、配偶者に対して、居住していた土地建物を残すとの遺言を作成したとしても、持戻免除の意思表示をしていないと、配偶者はその土地建物しか相続できない(現金や預貯金などは相続分を超えてしまい、相続できない)という事態が生じていたのです。

そこで改正法は、一定の条件を満たした配偶者については、この持戻免除の意思表示があったものと推定することにより、長期間連れ添った配偶者を保護することとしています。
一定の条件は、以下のとおりです。

① 被相続人の、配偶者に対する遺贈又は贈与であること
② 夫婦の婚姻期間が20年以上であること
③ 遺贈又は贈与の対象物が居住の用に供する建物又はその敷地であること

これは推定規定ですので、被相続人が反対の意思表示をしていたことが証明されれば、原則どおり持ち戻しの計算がされた上で具体的相続分が計算されることとなります。

遺産分割前の相続財産使い込み対策

共同相続人の一人が遺産分割前に遺産を勝手に使い込んでしまった場合、これまではその使い込み部分の返還を求めるために不当利得返還請求訴訟や不法行為責任を追求する訴訟を起こす必要がありました。
しかしこれらの裁判は地方裁判所に提起する必要があったため、「家庭裁判所で遺産分割調停をしつつ、地方裁判所で不当利得返還請求訴訟をする」という手間をかけなければなりませんでした。

新906条の2は、このような場合に、使い込みをした共同相続人以外の相続人全員の同意があれば、使い込みをされた財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことを認めました。
これによれば、使い込みされた財産も含めて遺産分割協議の中で話し合うことができ、地方裁判所への提訴をする必要性はなくなります。
(もちろん、地方裁判所への提訴を否定するものではないと解されます。)