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2019.03.27

相続法改正ポイント⑤~遺言執行者の権限の明確化

これまで相続人の代理人とされていた遺言執行者の責任が、
「遺言の内容を実現する」ことと明文化されます。
これにより、相続人と遺言執行者の対立が生じる場合や、
遺贈の履行者が誰なのか、といった実務上の問題点が解消されます。

遺言執行者の権限の明確化は、2020年7月10日からスタートします。

遺言執行者の権限の明確化

改正民法において、「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」
と明示されました(新1012条1項)。
そのうえで、「遺言執行者は相続人の代理人」と定めていた現行民法1015条は削除されました。
これにより、遺言の内容が相続人に不利益な場合であっても、遺言執行者は遺言の内容を忠実に実行すればよいことが明確になりました。

なお、新民法1015条は、「遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生じる。」とし、遺言執行者の行為の効力及びそのための要件(顕名の必要性)を定めています。

また、遺言執行者は自己の責任で第三者にその任務を行わせることができるようになりました(新1016条1項)。
これまでは「やむを得ない事由」がない限り復任は認められていませんでしたが、例えば複雑な遺言の執行を任された遺言執行者が弁護士などの専門家に遺言の執行を依頼することが自由になります。
なお、第三者に任務を行わせることがやむを得ない事由による場合は、その選任・監督についての責任のみを負担します(同2項)。

さらに、遺言による遺贈については、遺言執行者のみが履行できると定められました(新1012条2項)。
したがって、遺贈を履行してほしい第三者は、相続人相手ではなく、遺言執行者に対して、遺贈の履行を請求することになります。

遺言内容の通知義務

「遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない」と明示されました(新1011条2項)。
これまでも実務上行われていた相続人への連絡・通知を法律上明確にして、義務化するものです。

遺言執行妨害行為の禁止

これまでも、遺言執行者がある場合には、相続人は相続財産の処分その他遺言執行を妨げる行為をすることを禁じられていましたが、これに違反した場合の効力についても明示されました。
すなわち、遺言執行者がいるにもかかわらず、相続人が相続財産を処分等した場合、その処分行為は無効となります。

この「無効」、従来は絶対的に無効とされていました。
つまり相続財産を買い受けた後で、ぞれは遺言執行者がいるにもかかわらず相続人が勝手に行った行為であるから返還せよ、と言われてしまうということです。
しかし通常一般の第三者には遺言の有無や遺言執行者の有無を知る機会はないため、これでは安心して取引を行うことができません。

そこで、遺言執行者がいること・その相続財産が遺言執行の対象となっていることについて知らない第三者には無効を対抗できないとされました(新1013条2項)。
なおここでいう「善意」は無過失までは要求されていません。
このため、一般論として言えば、第三者が取引を行う際に遺言の存否や遺言執行者の有無まで調査する必要はない、と考えられます。

特定財産承継遺言

これまで「ある特定の財産」を「相続させる」と定めた遺言があった場合、これを「遺産分割方法の指定」と解し、相続開始によって何らの行為を要することなく(遺産分割などを行う必要なく)対象者に目的の相続財産が当然に移転する、とされていました。
したがって遺言執行者はこの「特定の財産」については関与せず(できず)、相続財産を承継する対象者自らが登記や引渡、預貯金口座の解約などの手続を行う必要がありました。

新法は、このような遺言(特定財産承継遺言)があった場合、遺言において別段の意思表示がない限り、遺言執行者が対抗要件を備えるために必要な行為をすることができると定めました(新1014条2項)。
また、対象財産が預貯金債権である場合は、払戻請求や解約の申し入れ(ただし、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限ります)ができる(同3項)こととされました。

別項で説明しますが、法定相続分を超える相続による権利の承継については、対抗要件を具備しなければ法定相続分を超える部分の承継を第三者に対抗することができないと定められた(新899条の2、1項)ので、相続においても対抗要件を具備する必要性が高まっています。

相続法改正により、遺言執行者の任務の重要性が増した、と言えるでしょう。